秋とは名ばかりで、11月に入りようやく朝晩の冷え込みに本来の季節を感じ取れるようになりました。例年であれば彼岸を過ぎれば鍋物が恋しくなりますが、このような気候の折、鍋物食材の動きはまだ鈍いようです。
さて、その鍋物ですが、味覚・価格共々主役と言えばやはり「ふく」でしょう。(下関では、「ふぐ」は不遇、「ふく」は福に通じるといい「ふく」と呼びます。)とりわけ、今日天然トラフクの値打ちは群を抜いています。
バブル期を除いても、その市場値は養殖物の出荷量に左右されず、高値安定しています。それ故に、家庭で気軽にとはいきませんが、近年ふくの養殖技術は格段に進歩し、その品質は徐々に天然物に近づきつつあります。養殖物の価格は、毎年生産量によって変動がありますが、高値とはいっても家庭でも食して頂ける価格に納まるように生産されています。
一般的には知られていませんが、一口に養殖ふくと言っても産地・業者により品質そのものに差があり、当然市場値に反映されてきます。又、同じ業者の魚であっても100gの単位でキロ値が変わってきます。
品質の差は育成の仕方によるものですが、主に区割の尾数・飼料の違いがあります。区割と言うのは、海中に作った育成用のいけすの一つ一つを言います。一区割に入れる尾数が少ないほうがふくの運動量が増え、身の締まった内蔵の小さい高歩留まりの成魚が出来ます。飼料は人工飼料が安値で早く成長させますが内臓ばかり大きくなり、品質の良い成魚を作る為にはイカや海老といった自然のえさを与えています。
その他多くの雑事がありますが、最も大変な作業に歯切りがあります。これは、成長と共に(ふくの歯は硬質で鋭い上下の二枚歯)を不安定な海上で一尾ずつペンチで折る事をいいます。幼魚でさえ指などを噛み切ってしまう鋭い歯を折ることにより、ふく同士が噛み合って傷つけ合うことを防ぎます。養殖物が市場に出始めた頃は尾ひれが無く傷のついたものが殆どだったのですが、歯切りによって外見上も天然ふくとの見分けがつけにくくなってきました。
販売や調理に関しては、それぞれ店舗には解体処理用の設備を設置した上で「ふく販売許可営業証」が、後者は調理する個々が講習・実習を受け「ふく取扱登録証」が交付され、初めて販売することが出来ます。